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忍は、一旦ボイスレコーダーを止めると、イヤホンを抜いて
ゆっくりとコーヒーカップを持ち上げた。
鼻先を撫でる柔らかな湯気と共に、そっとコーヒーを口に含む。
途端、深いコクのある苦味が舌をすべり、
どこか甘く、柔らかい刺激が鼻孔を抜けていく。
その一口が、まるで魔法のように忍を縛っていた動揺から
ふわりと解き放った。
そして、そんな自分に忍の口元がわずかに綻び、淡い笑いが零れ出る。
落ち着こうと躍起になんかならずに、初めから、こうしておけばよかった。
だからもう一口、芳しいく温かい液体をすすると
再びボイスレコーダーに耳を傾けた。
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