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聞こえてきた打合せの様子は、いつもと何ら変わりのないものだった。
忍自身の声も言動も、内側では何もかも全てがひっくり返ったように
狼狽えていたことなど微塵も感じさせないほど、いつも通りにクールなもの。
だが、この数時間の記憶がほとんど飛んでいただけに、
こんな自分に対して、少なからずホッと胸を撫で下ろさずには
いられなかった。
忍は、少し湯気の淡くなったカップを再び口元に運んだ。
そして、ゆっくりと芳しい中身を口に含み、そっと目を閉じる。
忍の耳に、終盤に差し掛かり軽く冗談が飛ぶ打合せの様子が入って来た。
そして間もなく、プツッと小さな音で録音が終わる。
忍は、静かに瞼をあげるとカップに残った中身を口中にそっと流し、
少しぬるくなってきたそれを舌の上で転がした。
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