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第4章 宿題(続き)
「悪いけど、ちょっと早めのランチに行ってくるよ」
こんな時は、服装も時間も自由でラフな仕事環境がありがたい。
お蔭で、極、自然なかたちで忍は一人になることができた。
ビルを出た途端、秋には程遠い日差しが容赦なく忍に降り注いだ。
だが、その下を彼はズポンのポケットに片手を突っ込み、
少し俯き加減で歩きだす。
アースカラーの麻の上着の下で、濃紺のTシャツにじわりと汗が滲んでくる。
本当にまずいな――。
オフィスまでの道のりでは、こんなねっとりとした暑さすら
全く感じなかった。
いや、その余裕すらなかったというほうが事実だ。
忍は、そんな自分にひっそりとため息を漏らしつつ、
クラシックな喫茶店の扉を押した。
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