再会

8/8
前へ
/134ページ
次へ
オイオイオイ。アカの他人じゃん! しかも一学年上の長男と、来年には中一になる妹がいるという。 「行くわきゃねーだろ!バッキャロー!」 「てめぇに選択肢なんかねーんだ、このガキが!」 漁師町コトバで大喧嘩したって、未成年に抵抗できるはずがない。 「再来年には、家を探す!俺も本社付けになったから!」 父の会社は、大阪が本社だった。 だけど、通常は北欧暮らし。 サイアク。 このオヤジ…凍ったサーモンでぶん殴ってやりたい… 家は売りに出すとのことだったけど、その手続きをするヒマが父にはなかった。 とうぶん空き家になる。 なんで住み続けちゃ行けないのかなぁ… 今だって、フツーに一人で暮らせてるのにさ。 試験のために、はじめて大阪へ行った。 新大阪の駅まで、中立さんが迎えに来てくれるとのことだった。 待ち合わせの場所で、キョロキョロと周りを見回していると、お兄さんが近づいてきた。 「工藤香奈さーん?」 「そ、そうです」 「どーも。中立の長男ですー」 「どうも…」 これでイッコ上? やけに落ち着いてる。 背が高いから、大人びて見えるのかな? カッコいい部類なんじゃない? うーん… 「キンチョーしてはる?」 「ははは…関東から出るの始めてなんで」 「エライことやったなぁ」 すっげぇ。 本当に関西弁だ。 早口って聞いてたけど、そうでもない。 「試験ゆうたかて、うちのやろ?落ちるはずないやん。気ぃ楽にしてき」 私は、中立兄妹と同じ私立学校の編入試験を受けることになっていた。 「どんな学校ですか?」 「人数は少ないなぁ。一学年二クラスやけど、人数がな十五人くらいやねん」 「少ないっすね」 「せやし、まぁほとんどが顔見知りやな。エスカレーターゆうのんもあるけど」 「勉強の方は…?」 「そんなもん、やるヤツおらん。心配せんでええ」 電車から、大阪の街を見た。 見なれない。だけど、まだ良くワカラナイ。 なにがワカラナイのかもワカラナイ。 こうして、大阪での生活が始まった。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加