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ある晴れた日、森の生物達は何かを感じ、自分の住処へ姿を隠した。
ある商人は森の横を通って街に向かうはずが、何故か遠回りして街へ向かった。
ある冒険者は毎日入るはずの森へ立ち入ろうと思わない事を不思議に感じた。
ある武人は、森に違和感を感じた。
ある王は、視線を森の方向へ向いたまま固まった。
ある神は、その森を微笑みながら眺めた。
10mはあろう切り株の中心に一人の青年と、その胸に体を丸めている子竜が寝ていた。
青年は寝ながら、胸の上の重さに違和感を感じたらしく手で振り払った。
「キュイッ!?」
子竜が手で弾かれ切り株に落ちる衝撃で起きた。
だが青年はそんな事を御構い無しに惰眠を貪る。
「キュッ!」
子竜は青年を起こそうと、小さな手で青年のほっぺたをペチペチと叩く、が効果はない。
起きない事を理解すると揃ってもいない歯で鼻先をハムハムとかじり出す。
青年はくすぐったく思ったのか、ふふっと笑って子龍手で弾いた。
「フミュッ!?」
またもや轟沈する子竜。
きっと頭の上に絵文字があるとしたら怒りマークが出ているだろう。
プンプンと怒りながらヨチヨチと歩く様は愛らしいと思う他ないだろう。
子龍は小さな翼で軽くふわっと羽ばたくと少しだけ宙に浮く、パタパタと顔の方へと飛ぶが、途中力尽きて切り株に墜落した。
息切れをしながら千鳥足で青年のもとへ向かうと、力なく鳴いた。
「キュ、キュイ~」
そこでやっと青年が目をさます。
子龍の方へと目を向けると首を傾げた。
そして、何かを言いたそうに口をパクパクさせるが、何も出ない。
青年は喉に手を当てて、首をかしげて口をパクパクさせるが何も聞こえない、そもそも出ていない。
子龍は青年が喋れない事がわかり、がっくりとうな垂れた。
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