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「えっお前文字書けないの?」
首を横に振る。
「でも、何も書けないって事は無いだろ」
書けないものは書けない、文字の読み書きはできるけど必要な所に何も書けないのだ。
何故なら記憶喪失だから。
「何も覚えてないのか?…ん?もしかして記憶無いのか?」
コクッと頷く。
今まで考えたことなかったが、両親の顔も、思い出も何一つない、何も覚えてない事に気付かず生活してたのだ。
そして今そのきっかけができた。
「どうしましょう、可哀想ですけど、これじゃあ登録出来ませんよ?」
受付の人も戸惑い気味だ、青年はそれ以上に困った顔をしている。
「おし、お前今から俺の息子な!」
青年は困惑した、見ず知らずの青年を息子にするなんて正気の沙汰ではない。
「えぇぇぇぇ!?そんな勝手なことしたら怒られますよ!?」
「そうだな、名前は〝蓮〟だな!」
その瞬間青年の体が光りだした。
『命名が完了しました〝鳳城 蓮〟』
『命名が完了した事により、ステータスを開けるようになりました』
「あっ!?あぁぁ、この子が跡取り息子になっちゃうんでさよ!?」
「はははっ!こうゆう性分なもんでな!さて息子よさっさと登録済ませちゃおうぜ!」
青年はこの人の人柄に、知らぬ間に涙を流していた。
誰から生まれ、誰に育てられ、何も覚えてない青年を…。
青年…いや、蓮はこの人の背中を見ていたい、そう思った。
「男が泣くんじゃねぇ、さっさと書け!」
蓮は袖で涙を拭い、書ける部分を埋めた。
と言っても書けるのは名前のみだが。
書いてるうちに出てきた涙は子竜がペロペロと舐めてくれていた。
「はぁっ…もういいです。属性を諸々調べに行きましょう…」
何かを諦めたかのようにため息をついたケバい受付嬢は、後についてくるよう言ってスタスタ歩いて行った。
そのあとに蓮達もついていく、受付嬢が立ち止まり扉をノックする。
「マスター、属性測定に来ました」
「入りなさい」
中からは威厳が篭った声が聞こえてきた。
受付嬢が扉を開けると…。
誰もいなかった。
中にスタスタと入って、真ん中のテーブルに着くと、座ってくださいと促されるままに座った。
受付嬢が座ると。
「みどぅりぃぁぁぁぁぁ!?」
うざキモい声が聞こえたと思ったら、受付嬢が蹴り飛ばした椅子がおっさんに変わった。
本当にうざきもい。
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