第壱幕

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その夜、男はどうしようもない程の衝動に駆られていた。目の前で無邪気な寝顔を晒している女を我が物にしてしまいたいという衝動である。四肢にはまだ、か弱い幼さを残しながらも胸の曲線や顔立ちのそれはもうすっかり大人びていた。 女が身に纏う桜色の着物が少しはだけ、首もとが露出している。男はそっと女の髪を撫でてみた。絹のような髪がゆらりと動く。女はふと目を覚まし、愛しい男が優しい笑顔でこちらを見ているのに気づいて顔を赤らめた。 男はゆっくりと女を抱き寄せた。安心できる陽だまりの薫りが男の鼻をくすぐった。陽だまりの薫りで自らの体内を満たそうと抱きしめる腕にぎゅっと力を入れた。女は愛しい男に抱きしめられたのが余程嬉しかったのか、その弱々しい二つの腕を男の背へと伸ばした。
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