第壱幕

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男は髪にうずめていた己の鼻を下へと徐々に降ろし、先程まで露出していた鎖骨に当てた。いつも着物に覆われている女の肌とはこんなにも陽だまりのようであるのかと、その心地良さにまかせ、その鼻を更に下へ。と、同時に女を抱いていた両の手で女の躯の曲線をなぞる。女の躯がピクリと跳ねた。男の鼻はいつしか女の成長したふくよかな胸の先端をとらえていた。気づけば、女の着衣はさらにはだけ、胸が殆ど露になっていた。雪の如く真っ白でいて透明なその躯は、桜色の着衣に映え、まことに美しかった。女の脚を愛でていた男の両の手は秘部に達してる。 女は少し苦しそうな吐息を漏らし、背を仰け反った。だが、あくまでも男にその身を委ねていた。 男がその躯を愛でる度に女は咲き乱れた。 男は本当に美しいものとは、春を彩る桜でも、夏空を映す海でも、秋の野山を染める紅色の木々でも、冬の富士を駆ける千鳥でもない、この女なのだと思った。この美しさの前ではどんな景色も花も霞んだしまうようだと、そう思ったのだ。 己の欲情に任せ、愛で続けた。 そして、何度も何度も、女を咲かせた。
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