後輩書記とセンパイ会計、不乱の刀剣に挑む(冒頭部分)

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 開架中学一年、生徒会所属、有能なる書記のふみちゃんは、時代が違えば、神託を受けて神聖な物体の内なる声を解釈して伝えられる人――審神者(さにわ)と言うらしい――にだってなれただろう。ふみちゃんは小学生時代、家の神社で巫女のお手伝いをしていて、各地からお清めのために届いた刀剣に触れただけで、どんな由緒があるか、誰が作ったかなどを言い当てることができるほどの上級者だったらしい。  そして、そのふみちゃんから、はにわ……じゃなかった“さにわ”はどんな漢字を書くのかを図書館で教わっている一年先輩の生徒会所属、平凡なる会計の僕は、およそ吊り合わないほどの神託知らずで、数学が得意な理屈屋で、物体の内なる声が聞こえると言えば、昔「おでこの眼鏡でデコデコデコリーン」というテレビ番組があったと親から聞いたことがあり、つまりそれが進化すると次世代の眼鏡型コンピュータ『ウェアラブル』になるわけで、いつか手に入れたいと思っているところだった。  僕はふみちゃんが審神者だと説明したが、実際にその場面を目にしたわけではない。どうもそれが夏休みに栃木県に旅行した時に起きたらしいが、僕はそこにいなかった。なので、ここからは生徒会長の三年生、屋城世界(やしろ・せかい)さんが語ることになる。  世界さんはすごい名前だが、性別は男だ。陸上部のエースで、爽やかな短髪で一年中日焼けしている健康優良児で、走り幅跳びで県大会に出たほどの実力者だ。陸上は中学で始めたらしく、小学校ではサッカーや武道をやっていたらしい。大きな家に住んでいて、ちょっとした武道場もあるそうだ。  というわけで、僕は世界さんを紹介して、次の話まではしばしお別れである。  寂しくなんかない。  全然寂しくなんかない。  この眼鏡がそんな内なる声を発するわけがない。 (※続きは本でお読みください)
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