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「…女の人?」
風でなびく長い髪やワンピースは、女性であることの印だ。しかし、ワンピースとは、これまた根性のある女性だな。
寒くないのだろうか。
「ん…?誰かいるの?」
すると、足音に気づいたのか、女性が俺に問いかけてきた。
しかし…すごい聴覚を持っているな、結構距離あるのに。
「え、えと…はい」
やべぇ、緊張してきた。
「ふふ…あなたも星を見に?」
…ということはこの人も天体観測しに来たのか。まあ、それしかすることないしな、ここ。
「ええ、まあ」
単調な台詞しか言わない…いや、言えない俺に、彼女はまたクスリと笑った。
「こっちにきて、一緒に見ませんか?」
「え、いいんですか…じゃあお言葉に甘えて…」
のそのそと彼女の元へ近づく俺。
なんかカッコ悪い。
「そんなに緊張しなくてもいいんですよ」
「ははは…」
自分のコミュ力のなさに苦笑しながらも、彼女の隣へやってきた俺は月明かりに照らされた宇宙を見た。
「…目、宇宙みたいですね」
「……宇宙?」
俺は彼女の瞳を見るなり、瞬時にそう言ってしまった。しかも、腑抜けたえ?という顔をしている。こいつナンパかよとか思われていないだろうか。
しかし、彼女から返ってきたのは意外な言葉だった
「あの、宇宙って……なんですか?」
「…………え?」
今度はこっちが腑抜けた顔になった。
彼女の宇宙とは?の問いに、俺は少しフリーズした。その間突如開催された俺の脳内サミットではいろんな議論が繰り広げられた。
《彼女は星がどこにいるか理解しているのか?》
《いや、それ以前に彼女は病気なのでは?》
《記憶喪失的な病気か?星の記憶だけは特別で覚えているみたいな?》
《そうそう、そんな感じ》
《よし、結論は病気で決まりだ》
以上。脳内サミット終了。
しかし、いきなりあなたはキオクソーシツシャなのですか?などと聞けば、絶対に引くだろう。
どうしよう。
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