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おぼつかない足下の感覚もそうだが、利き手が完全にふさがれた今の体勢ではいざ何をするにも不自由だった。
加えて空いてるほうの左手もさほど自由を許されているわけでもない。
クロフクというこの特異な体質から、いかつく肥え太った体型と重たい体重が今はひどく呪わしかった。思わず舌打ちが出かけるが、そこに折しもこの左の耳元でピーピーと小鳥がさえずるような音がする。
これに背後の大木、立派な樫の木の幹を掴んでいた左手をやむなく放して、みずからの左耳に仕込んだサングラスと一体型の通信機のスイッチをオンにする。
クロフク向けに造られた飛びきり頑丈な防弾グラスはいかついぶんにこの機能が多彩だ。
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