溺れる魚

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 すると、頬に皆川の手が添えられ、首の向きが変わる。強引に視線を合わせられる。 「あっ」  何か思うまえに、淳の唇は皆川に奪われていた。  熱い。ただ、軽く触れているだけなのに、じわじわと熱が全身に伝わるように熱くなっていく。突き放す事はできるはずだ。なのに、それが出来ない。  きっと、酔っているからだ。こんなに熱く感じるのも。唇が触れ合っている理由なんて分からないのに、涙が出てきそうな程、胸が苦しいのも。  皆川の舌が当たり前のように淳の口腔内に侵入してきて、怯える舌に絡ませる。緩く上顎を撫でられると、擽ったさに鼻から抜ける声が漏れた。  何度も角度をかえて出し入れされる舌に、翻弄されながらいつの間にか、自分も合わせていた。  皆川の手が触れている頬や背中からゾクゾクする何かが這い上がってくる。 (こんな感覚知らない。怖い)  経験した事がない体の震えに、淳は怯えた。逃げたいのに、逃げたくない。相反する気持ちが行き場を失う。 「んっ」  ようやく皆川の唇が離れた時には、淳の息は上がっていた。崩れそうな体を皆川が支えてくれる。 「な、んで?」
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