309人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
小学生の頃の記憶。淳に対して、母は厳しかった。特に母の基準に達していないものはなんでも除外された。
好きなおもちゃも。テレビも。友達も。
仕事から帰ってきて、電気もつけずにソファに横になった。心がもやもやして、気分が晴れない。
今日一日、憂鬱な気分のまま過ごした。毎日のように内野を誘うわけにもいかず、まっすぐ帰ってきたはいいが何もする気が起きなかった。
それだから、ずっとずっと昔の記憶がよみがえってくる。
「一緒に遊ぼうよ!。急に何だよ」
あの子は言った。傷ついた表情の中に怒りも滲ませていた。胸が痛かった。
「ごめん」
淳には他に思い付く言葉は見当たらなかった。遊べない理由はただ、母がダメだというから。正当な理由など無い。淳にも戸惑いしかなかった。
「意味わかんない」
「母さんがダメだって・・」
何度言い合おうとしても、ごめんしか答えない淳に、あの子の表情は怒りから、寂しさに変わった。
胸がズキズキする。自分だってこんなことを言いたいわけじゃないのに。でも、母が正しいのだ。遊ばない事が唯一淳が立派になるために必要なこと。
「ごめん」
最初のコメントを投稿しよう!