溺れる魚

16/40
309人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
   淳は未来に電話をかけた。10コール鳴っても出ない。  (何で出ないんだ。前はこっちから連絡しなくたってかけてきたのに)  未来の声を聞けばわかるはずだ。  未来が好きだって。自分は女性が好きなのだと。そう思いたいのに。  本が好きなように、文房が好きなように、映画を好きなように、未来も好き。  好きだったのに。  未来がわがままを言っても許してきた。未来が楽しいならそれでいいと思ったから。  そして、自分も楽だった。未来の意見に合わせておけば、不機嫌になることは無い。  淳の意見なんてなかった。望みなんてなかった。  でも、今は切に電話にでてくれる事を願った。  彼女が好きだといつものように言ってくれれば、淳も好きだと言おう。それで安心出来る。  頼む出てくれ。  これ以上何も考えたくないと思った。  けれど、何分待っても未来からの返事は来なかった
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!