溺れる魚

8/40
前へ
/140ページ
次へ
「それは、困ります」 「白川さん、早く結婚してくれりゃーいいのに」 「落ち着きますかね」 「・・・どうだろうな」 「結婚しても、付き合わされそうな気がします。・・・旦那さんも」 「あの人について来れる男がそもそもいない気がするな」 「あー・・」  顔を見合わせて、二人で吹き出した。  内野とこんな会話が出来ると思っていなかった。誘って良かった。今は笑っていられる。  その後もくだらない話で盛り上がり、酔っ払いと言われるほどには酔いが回ったところで、解散した。  タクシーでマンションに向かい、ふらついた足で部屋へ向かう。カバンの中から、鍵を取り出したところで、目を見張った。  淳が住んでいるマンションはオートロックではない。部屋の前に皆川が立っていた。 「み、ながわさん?」 「良かった」  淳が来た事がわかると、どこか強ばらせた顔が緩んで、笑顔を作った。 「何で・・・」 「ラインの返事が来なかったので」  それだけで、わざわざここまで来たのか?。 「えっと」 「ちょっと、お話したいんですけど、入れてくれませんか?」  困ったような笑顔に、嫌だとは言えなかった。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加