溺れる魚

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淳の部屋は広さ6畳の1DKだ。給料の事を考えれば、これ以上広い部屋は借りられなかったし、一人には十分だった。  部屋にはベッドとガラステーブル、32インチのテレビに、少し大きめの本棚があるだけ。  そこに皆川がいる。  アルコールのおかげでクラクラする頭には、今が現実なのか夢なのか区別がつかない。  ガラステーブルの前で、正座をする皆川に淳は冷蔵庫からコーラを出して渡した。 「すいません、それしかなくて」 「あ、いえ、こちらこそ気を使わせて」  渡したコーラはプルタブを開ける事なく、ガラステーブルに置かれる。  淳も皆川の横に座った。  何だか気まずい。一昨日は一緒にいてあんなに楽しかったのに。何が違ってしまったのか。  話し出さない皆川に焦れて、淳は口を開いた。 「あ、の、話って何ですか?」  皆川が淳をまっすぐ見る。人を射抜く視線に、ドキリとした。 「吉岡さん、お酒飲んでるんですか?」 「?、え、はい」  思いもよらない質問に、淳は戸惑う。
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