隣家の人影

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隣家の人影

 一人暮らしを始めたアパート。隣には一軒家。  洗濯物を取り込むベランダで、隣の庭に影が見えた。  走り回る二つの影と付き添う一つの影。  庭で遊ぶ子供達を、お父さんかお母さんが見守っているのかな?  姿は見えないし声も聞こえないけれど、はしゃぐ影だけで平和だなと思った。  朝起きて、カーテンを開けた窓の向こう。目に入る隣家の窓に人の影。  大きさからして大人のようだけれど、子供だとしても関係ない。誰がどこの部屋にいようがよその家。こちらの気にすることじゃない。  アパートに帰りついたら、隣の家の門の所に人影が伸びていた。  ここから姿は見えないけれど、家の人が立っているのだろう。  子供達はよく庭で遊んでいるようだから、屋外にいるのはよくあることなのかな。  わざわざそちらへ足を伸ばす理由はないから、ただそう思ってアパートに入った。  こんなふうに、越して来てからちょくちょくと見かける隣家の家人。  いつもは微笑ましいと思っていたけれど、近所の人に聞いて血の気が引いた。  お隣の家は、年が明けてすぐ、交通事故で一家四人、同時に亡くなられているそうだ。  以来、まだ隣は空き家らしい。  じゃあ、私がこれまで見てきたものは何なのか。  今日もベランダから隣家を窺えば、庭には親子四人の影。  もう少し身を乗り出して角度を変えれば、きっとその正体は判るだろう。けれど、それは絶対にやってはいけないことだという気がして、私は今もこれまで通りの生活を続けている。ただ、隣家に人影が見えた時には、すぐさまそちらから目を逸らすようになった。 隣家の人影…完
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