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あれから5年が経ち、羊助は其の教訓と経験
から、高所での作業、鳶職という仕事に誇りを
持ち、羊助が勤める建築派遣会社・㈱猛士では
若手の模範となり、代表・藤野佳織の支えと
なっていた。夜の7時過ぎ~
猛士の事務所には
既に誰も
居な
い。
「ただいまです♪」
「お帰り、羊ちゃん♪」
事
務所の
奥から響く代表・佳織の
声に、「まだ居ったんですか?」と、返す羊助。
「羊ちゃんが頑張って残業してくれちょる
のに帰れんやろ♪」
羊助の帰社を1人待っていた佳織が奥から姿を
現し、羊助に屈託の無い笑みを送った。キュー
トな顔立ち、黒髪に茶のメッシュを流した
出で立ちは、とても四十路前
の女性には
見えな
い。
「そんな気遣わんで、早う帰って体休めて
下さい!」
「良いんよ♪羊ちゃんに伝えたい事
あったし、確認しときたい思ったから、
2人になりたかたんよ♪」
「確認したい事??」
「うん....実はお昼頃、女の人から
電話あってな、渡羊助は御在籍かっ
て聞かれたんよ....」
「女ですか....」
「うん....心当たりあるん?!」
然し、
羊助は佳織の問いに
首を横に振り、覚えが無い事を伝えた。
「保険の勧誘か何かじゃないんすか!?
自分には身に覚えが有りませんね♪」
「そんならええんやけど、羊ちゃんが
修羅場に巻き込まれんのは見とう無いし、
気い付けてな!」
「大丈夫です。最近付き合った女は居らんし、
過去にもそんな別れ方はしとりませんから....
今は猛士を....姐さんを守るで、色恋どころや
ありまへん♪」(笑)
「ありがとう♪羊ちゃんだけや__
猛士やあたしの事思うてくれるんわ♪」
「俺は猛士に骨埋める決めたんです!
姐さんに付いて行きますから♪」
「うん、頼りにしちょるよ♪」
「そろそろ事務所閉めて帰りましょう♪」
此の後、2人は事務所を出て戸締まりを掛け、
肩を並べて駐車場へと向かった。駐車場は猛士
の事務所があるビルの1階北側にある。
事務所前の通路を進み、
外階段を
下り
る。
「ホンマにええの?アパートまで
送るのに.... 」
「買い物もありますし、タバコも買わんと
いけんので歩きます♪」
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