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「分かりました。戻ります!」
俺は、買い出しした食材を冷蔵庫にしまい、
徒歩で14~5分の会社までの道程を戻った。
佳織女史の話しっぷりでは、伝票や領収証の不
備ではなさそうで、何か別の用件の様である。
正かとは思うが、酒の誘いかと勘ぐったが、そ
うでもなさそうだった。俺は煙草に火を着け、
煙を吸い込み吐き出しながら、女史の意図を
考え思考させながら歩を
進めて行った。
軈
て、
事務所が
所在するテナントビルが
視界に入り、俺は外階段を登り共用通路を通り、
社の扉のノブを引き社内に足を踏み入れた。社
内には誰の姿も無く、全員退社して室内は静寂
の空気に包まれていた。
「羊助です。姐さん.......」
「あっ、羊ちゃん。ゴメンね.....
悪いけど、鍵閉めちょってくれん__」
地方の方言混じりで促す女史の言葉に、俺は
入り口の鍵を掛け、女史の居る衝立で仕切られ
た社長室の空間へと向かった。
鍵を掛けるという事は、2人だけの密室内で
話さなければならない状況。俺は電気の消灯も
尋ねてみた。
「照明も落としますか?」
「うん、其の方がええかも__」
照明のスイッチを女史の居る奥以外をオフに
して、非常灯の明かりだけとなった暗闇の中を
女史の元へと向かった。
俺の容姿を衝立の仕切りの向こうから女史の
視界の中に現すと、女史のデスクの傍らに呼ば
れ、先ずは♪急に呼び戻した旨を詫びて来た。
「ゴメンね、呼び戻して__」
「いえ__」
「早速やけど、此れ見てくれん__」
肩までのミディアムボムの髪を耳の後ろに掻
き、何時ものキュートな笑顔で接する顔つきと
は違うやや緊張した趣でパソコンの画面を俺に
差し向けて来た。俺が上体を屈め覗き込むと、
其のすぐ真横に女史の顔が並び、俺は一瞬、ド
キッとなった。
39歳のアラフォー世代にはとても思えない
キュートな横顔と漂って来る甘い甘露な香水の
芳香に、俺はクラッとなりながらも平常心を保
ち、パソコンの画面に視線を向けた。
パソコンの画面に記された文面は__
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