第1章

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凄い物を発見した興奮と見られる緊張で今までのどんな時より跳ねる心臓の音を誤魔化すように 「お、お前は百年に一度しか咲かないっていう花かっ!」 と ぶっきらぼうにぶつけると、 花は涼しい顔で 『あなたは口の聞き方も知らないのね』 と 冷たく言ったっきり 顔を背けてしまいました。 ギィは腹が立ち 「お前はこんな誰もいない、何もない、それに足もないから何処にもいけないくせに、何を知ってるって言うんだっ!!」 と 怒鳴りました。 花は 『確かに私はここから動いたり出来ないけれど、自由に動き回れるあなたが私より何かを知っていて、周りに、誰かが居るようには見えませんけれど?』 と 冷たく言い放ちました。 ギィは赤い顔をますます赤くして 怒りましたが、悔しいけれど、言い返す言葉が見つかりません。 ギィは ふんっと鼻をならし、どかどかと来た道を帰って行きました。 ギィは歩きながらブツブツと文句を言ってましたが、段々嬉しくなってきました。 初めてだったのです。 「誰か」と話したのは。 ギィは次にの日も花の所へ行きました。 花は昨日と同じ様にギィが行くと 歌うのを止め、 ギィを冷たい目で見ました。 その次の日も またその次の日もギィは行きましたが どう話して良いのかも分かりません。 美しい歌声に聞きたいだけなのに、 「俺様が聞いてやるから歌ってみろ!」 としか言えません。 当然、花は 『あなたに聞いてもらいたくないわ』 とそっぽを向くだけ。 それでもギィは毎日、毎日行きました。 ある日、ギィは途中で木苺を積み それを抱えたまま行きました。 ギィは どう話して良いのか分からなかったので、 今日はあそこで木苺を食べようと思ったのです。 イバラのドームに入り どかりと座り木苺を食べ始めると、 初めて花の方から話しかけられました。 『あなたが持っているそれはなぁに?』 ギィはびっくりしましたが、 「これは木苺!甘酸っぱくてうまいんだ!」 と 答えると、 花はぱっと明るい表情をして、 『まぁ!それが木苺!なんていい香りなんでしょう』 『教えて頂きありがとう』と微笑みました。 ギィは嬉しくなりました。 すごくすごく嬉しくなりました。
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