第1章

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その日から ギィは毎日、1つづつ、 小さな草花や鳥が落とした羽根や、 川の石、捕まえた魚、 ギィが花の事を知った本など 色々な物を持って行ってはひとつづつ丁寧に花に説明しました。 花はどんな物も嬉しそうに見て 驚き感動して、ギィに感謝しました。 中でも本は特に気に入った様で、 ギィに本は毎日持ってきてください。と頼むほどでした。 毎日、本を見ていた花は 自分と同じ色の海の写真に酷く惹かれた様で、 『本物の海はどんなに大きく素敵なんでしょう…』 と 目を閉じる花に、ギィは 「見せてやるっ!!」と立ち上がりました。 花は一瞬喜びましたが 直ぐに 『無理よ…私はここから動けないもの…』 と肩を落としました。 ギィは少し考え、 何かを思い付いたのか急に飛び出る様に走って行きました。 程なくして 今度は飛び込む様に戻ってきたギィは自分がいつも使っている 大きな茶碗を突き出し 「俺がお前をここに入れて海まで連れてってやる!!」 と 白い牙を覗かせニカリと笑いました。 花は目を丸くして 『そんな事が出来るの?』と驚きました。 ギィは任せておけと言わんばかりに 自分の胸を強く一度叩くと、 花の足元の周りの土を 優しく優しく掘り始め、丁度茶碗と同じ位の土と花を一緒に掘り上げて 茶碗に入れました。 「どうだ?痛い所とかないか?大丈夫か?」 とギィが聞くと、 花はまだ信じられないといった表情で 『え、…ええ…大丈夫…。』 とだけ答えました。 ギィは安心して、 今度はイバラの蔓を一本引き抜き 刺を丁寧に落とすと、 母親が赤子をおぶ様に蔓を使って、 茶碗に入った花を背中に背負いました。 image=497320862.jpg
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