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「おなか減ってるんだけど」
「ちゃんとおごるよ」
「直帰ってことないの? うちのお兄ちゃん、よくやるよ」
「紘斗はそんなことしない。遠くの出張ならともかく、どうやっても会社には帰ってくるよ」
「確信するじゃない?」
知香はうんざりした口調から一転、おもしろがった声だ。
ちらりと見ると、何か云いたそうにくちびるを歪めてにやついていた。
「……勘だけど。……何?」
「健気だなぁって思って。哲ちゃんのときにはないパターンだよね」
「哲ちゃんは約束してるから待つってことがないだけ。紘斗の場合は不意打ちだから」
「ふーん」
知香の相づちは納得している響きではない。
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