第15話 銀杏の透き間

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「おなか減ってるんだけど」 「ちゃんとおごるよ」 「直帰ってことないの? うちのお兄ちゃん、よくやるよ」 「紘斗はそんなことしない。遠くの出張ならともかく、どうやっても会社には帰ってくるよ」 「確信するじゃない?」 知香はうんざりした口調から一転、おもしろがった声だ。 ちらりと見ると、何か云いたそうにくちびるを歪めてにやついていた。 「……勘だけど。……何?」 「健気だなぁって思って。哲ちゃんのときにはないパターンだよね」 「哲ちゃんは約束してるから待つってことがないだけ。紘斗の場合は不意打ちだから」 「ふーん」 知香の相づちは納得している響きではない。
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