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「へんな誤解しないで――あ!」
姫良は小さく叫んで表情を止めた。
暗がりでも、背後からは貴刀ビルの灯りが、正面からは外灯が、と、相まって紘斗の姿をくっきりと映しだす。
「出てきた!?」
「……うん。でも……」
ためらったすえ、姫良はきっぱりと立ちあがった。
「知香、とにかく出るよ。支払い、頼んでいい? あとで渡すから。見失わないようにさきに出てる」
「オッケー」
知香は軽快に了承して席を立ち、姫良はコートとバッグをつかんで出口へと向かった。
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