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外に出るとすぐ、向かい側の歩道をゆっくりしたペースで歩いている紘斗を探し当てた。
遠目でも、そのすっと背を伸ばした歩き方は紘斗そのものだと区別がつく。
等間隔に並ぶ、街路樹の向こうに一瞬だけ姿が消えてはまた現れる。
その隣に女性がいるのは予定外だった。
いや、今日――五日は紘斗の誕生日で、それをカノジョとお祝いするという予定があっても当然至極だ。
「姫良、終わったよ。それで、どこなの?」
知香に応えて姫良は指差した。
「あそこ。いま、パン屋さんのまえ」
パン屋が入ったビルは四つ角にあって、ちょうどふたりの姿はそこを折れて消えた。
「姫良、早く追いかけなくちゃ」
知香は彼女――美春を通りすがりとでも判断したのか、同伴者と気づいていない。
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