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道路を横切ってミザロヂーのある通りに入ると、ライトアップされた銀杏の木に迎えられた。
ビジネス街とは思えない幻想的な佇まいだ。
銀杏の葉はまだ緑色だが、そのうち一気に金色に変わるだろう。
通りの奥へと目をやると、ミザロヂーのまえあたりでまた紘斗の姿は消えた。
追っても追っても距離が縮まることはない。
それは姫良が望むことなのに、立ち止まって振り向いて、そんなことを願う。
追いかけてミザロヂーに入ると、今日はビジネスマンという客層がメインのようで、店内は落ち着いた雰囲気だ。
お喋りをする声は低く、くぐもって聞こえる。
グラスにビー玉を落としたときのような、軽やかな笑い声が混じり、それらが温かい空間を演出している。
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