第15話 銀杏の透き間

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平日でも人が多いというのは、ミザロヂーではいつものことだ。 いまはそれが姫良にとっては絶好のコンディションでもある。 「どうするの」 知香が耳打ちした。 それに答える間もなく、顔見知りの給仕がやってきた。 「遠野さま、いらっしゃいませ。申し訳ありません。ただいま空席が――」 「あ、よければ」 姫良が口を挟むと、お辞儀をしていた給仕は背を伸ばす。 「どう致しましょう?」 「ん――っと……」 戸惑う給仕を尻目に姫良は店内を見渡した。程なくその姿を探し当てる。 「いま来たカップル。そこに同席したいんだけど」 姫良が指差す方向を向き、目を戻した給仕は困惑顔になった。
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