129人が本棚に入れています
本棚に追加
平日でも人が多いというのは、ミザロヂーではいつものことだ。
いまはそれが姫良にとっては絶好のコンディションでもある。
「どうするの」
知香が耳打ちした。
それに答える間もなく、顔見知りの給仕がやってきた。
「遠野さま、いらっしゃいませ。申し訳ありません。ただいま空席が――」
「あ、よければ」
姫良が口を挟むと、お辞儀をしていた給仕は背を伸ばす。
「どう致しましょう?」
「ん――っと……」
戸惑う給仕を尻目に姫良は店内を見渡した。程なくその姿を探し当てる。
「いま来たカップル。そこに同席したいんだけど」
姫良が指差す方向を向き、目を戻した給仕は困惑顔になった。
最初のコメントを投稿しよう!