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十月の中旬。だれも寄りつかない廃ビルの屋上に、少女が立っていた。どこかの学校の制服を着た、どこから来たかも知れぬ少女。白いブレザーと二つ折りにされた紺のフレアスカートから僕は彼女を学生と判断し、あえて彼女を少女と形容したが、その容姿は世俗に塗れた大人たちよりずいぶんと大人びていて、ともすれば純真無垢な子供のようであった。
ただ「死」だけについて考えた、もっとも正しく美しい人間としての少女が、僕の隣に立っていた。
それはまさしくいつの間にかだった。
フェンスを越えるときはまさかこんなところに人がいるとは思わず、足元だけを見ていたが、越えてみると僕より先に彼女が“向こう側“に立っていたのだ。
そしてこれが僕と彼女の最初の会話である。
「キミもここから飛ぶのかい?」
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