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「どうでしょう?」
「どうでしょうって……まさかここからの景観でも楽しむためにわざわざやってきたとか?」
「初対面の女性に対して饒舌ですね。ひょっとしてモテますか?」
「モテてもモテなくても人はひとりで死ぬだけさ」
「もっともですね」
少女は空を見上げるのをやめた。そうして靴先がはみ出るくらいの狭い場所で踊るように身を翻した。
「もちろん、私は死ににきましたよ」
スカートが空気を含んで傘のように膨らみ、彼女の白い手が円を描いた。
「ですが、まあ。お先にどうぞ。私が見ていてあげますから」
「いやいや。そういうわけにはいかない。こういうのは早い者勝ちだ」
「だから勝っていいですよっていってるじゃないですか」
「いやいや。人生の決着は自分でつけたいんだ。人に飛べと言われたから飛んだんじゃ、もし死後の世界に神様がいて『生きろ』って言われたら生きないといけないじゃないか」
「めんどくさいですね。線で繋がっているわけでもあるまいし」
「これは僕の生き方だ。つまり死に方だ。それくらい、自由にさせてくれ」
「まあいいですけど。でも私はべつに飛び降りるつもりでここにきたんじゃないですよ?」
「なんだって?」
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