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そういって、彼女の指がフェンスの向こうを指す。灰色のタイルを敷き詰められた長方形の空間。突き出た立方体に扉が埋め込まれていて、その先は地獄へと繋がっている。
「あそこにプールを作るんです」
「プール? 学校のみたいな?」
「そんな大仰なものじゃなくて。おもちゃ屋さんとかで売ってる空気で膨らむやつ」
「ああ」
「それかいっそ洗面器でもいいですね」
「泳げないじゃないか」
「泳ぎたいんですか?」
「いや、まったく」
「洗面器に顔をつけて幾何でぶくぶくポックリ逝きますよ」
「そんな死に方でいいのか?」
「例えばですって」
「なんだそれ」
彼女につられて、僕もいつの間にか笑っていた。
ほんとうにくだらない話だ。そう思いながら。
「じゃあ、まあ、一緒に考えてみますか?」
「え?」
「最高の死に方について」
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