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「そう。じゃあ私はルイ」
「おいおい。それでいいのか?」
「うん。それがいい」
ルイは僕から手を放すと、胸の前で指を絡ませあって両手を重ねて目を閉じた。
その姿はまるでなにかに祈っているようだった。
ルイ。ルイ。そう、何度か呟くように繰り返す。うれしそうに。かなしそうに。
自分の中に名を染み込ませると、彼女は目を開けて陰りのある瞳に僕を映して笑う。
「じゃあ、キミはジョンね」
「ちょっとまってほしいんだけど」
「待たない。私はずっと呼びたかったの。ジョンって」
「ちなみにそれって」
「飼いたかった犬の名前」
私の家、ペット禁止だったから。
そんな理由で、僕の名前は生きている間はジョンになった。
こうしてルイと、僕ことジョンの自死に関する考察が始まった。
それは有体な比喩で飾ると、一瞬のようで永遠のような時間だった。
人は一刻も早く死ぬべきだという金科玉条の、考証する余地もない解に牽引されて哲学する僕ら二人の物語。
なにひとつ批判的視線に晒されることのないこの場所で、僕らはよりよい死を求めて時間を彷徨う。
そして答えが見えたとき、僕と彼女は互いに決着を迎える。
だからこれはきっと、生と死の狭間にあった出来事である。
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