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「莉々」
甘くとろけた声と共に、
熱い舌の感触が
耳を這い回る。
初めて聴く
からまる水音に、
腰がびくんと揺れた。
「蛍太、やめて」
「どうして。
……口で言うほど
嫌がってないの、
判ってるよ」
「……!」
世にも最低な
言葉のはずなのに、
羞恥心だけが
膨れ上がる。
この感覚には、
覚えがあった。
人間が図星を指された時の、
強烈な恥ずかしさだ。
羞恥心は大いに
人を傷付ける。
蛍太はとっくに
そんなことを
承知しているのか、
ふ……と小さく
笑い落としながら
あたしを抱きすくめ、
噛みつかないように
耳から首筋へと
口唇を這わせた。
「や、や……!
けー、た……」
「莉々、
見かけによらず
敏感なんだねー。
……やりがいありそ」
嬉しそうに言った
蛍太の顔が
正面に来た瞬間、
その向こうの背景が
ぐるりと回転する。
背中でぽす、と
空気を吐き出したのは
やわらかいベッドで、
思わずひっと声を上げた。
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