曖昧な愛情

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  「……えへ、拓海。 ごめんね、 洗面所占領して」 それでもあたしを 離さない蛍太は どういう神経をしているのか、 へらりと笑って顔を傾けた。 「どうでもいいが、 帰ってからやれ。 あとがつかえてる」 「はーい」 蛍太は、硬直したままの あたしを抱いて そっと洗面台を 拓海さんに譲る。 どうしたらいいのか判らず 蛍太にしがみついて 顔を伏せていると、 すれ違いざまに 拓海さんがこちらを見た。 「おい、莉々」 「は、はい……」 「カズヤはそれ、 把握してんのか」 そろそろと 拓海さんを見上げると、 いつもの気怠げな表情に 心配が混ざっているのが 見て取れた。 いつも渋い顔を している人だけど、 半年も近くにいれば 些細な違いは判る。 .
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