曖昧な愛情

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  「はーい、 お疲れ様でした!」 いつもの担当さんが、 満面の笑みであたしから サロンケープを 取り払う。 その瞬間 ふわっと広がる いい香りに、 溜め息をついた。 このヘアサロンに 通い始めて、 もう何年になるだろう。 通うところを 気分で変える モデルさんも多いけど、 あたしはこのお店一筋だ。 「莉々さん、 最近なにかありました?」 「え?」 「ちょっと、 大人っぽくなられたような」 田畑さんはにっこりと 微笑んでくれる。 何気ない質問なのに、 どきっとした。 「ええ、本当ですか? なにも、ないですよ」 「ええー、 隠したってだめですよ。 私、この5年、 莉々さんのこと ずっと見てるんですから」 誇らしげに胸を張る 田畑さんに、 思わず苦笑してしまう。 「本当に、 なにもないですよ。 ……本業が マネージャー業に なりつつあるくらいで」 ──つい最近 “女”になりました、 なんて 言えるわけないじゃないか。 .
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