侵食する執着

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  「う、ん。 ……電話で起こしてくれって 言ったくせに、 モーニングコールに ぶち切れて携帯壊したりとか。 マネージャーさんに 代わりに機種変 やってもらったくせに 欲しいのこれじゃなかったって 言ってたりとか。 そういうの続いて マネージャーさんが胃潰瘍で 血を吐いちゃったとか……」 「……。 まあ、悪気はないんだがな」 「悪気ないのって 一番よくないと思うの……」 「そうだな。 ……ところが、だ」 「うん」 お兄ちゃんは タブレットの バックライトを 消してしまうと、 眼鏡を外す。 わざわざ動作を挟んで 話すとか……。 「お前にマネージャーを 任せた途端、 女性問題以外は ぴたりと治まった」 「女性問題以外……」 なんとなく 胸がちくりと痛い。 ついこの間までは、 人目以外は そう気にするようなことじゃ なかったのに。 お兄ちゃんは眉根を寄せ、 部屋に他の人が いないのをいいことに 頬杖をつく。 人前でこんな くだけた仕草を 見せる人じゃないので、 半分プライベートなことを 話してるんだろう。 「まあ、莉々に “親に言う”なんて 子どもじみた 脅しをかけても 効かないことが、 蛍太にも 判ってるんだろうが」 「……蛍太のご両親、 昔から知ってるしね」 .
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