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演歌歌手の母親と、
フォーク歌手の父親。
それが、蛍太のご両親だ。
どちらも今も
現役で歌っているし、
需要もそれなりにある
ベテランの大御所。
俳優であるうちのお父さんと
蛍太のご両親は
なにかと近しい関係だ。
それで、
よく知っているだけの
話なんだけど。
「蛍太と同い年のお前を、
あちらの奥様は気に入って
可愛がってたしな。
モデルになれって
勧めてくれたり……」
昔話を取り出して
眺めるように目を細め、
お兄ちゃんは息をつく。
「……お前、
蛍太にどう言って
聞かせてるんだ?」
「え?」
「道義に乗っ取って
話をしても、右から左だ。
“Raison d'etre”では
拓海の力の方が強いから
蛍太も従うが、
そうでなかったら
どんな暴君になってたのかと
考えると──
少し恐ろしくてな」
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