侵食する執着

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  「……別に、普通だけど。 蛍太はそれでいいと 思ってるの? とか、 人に迷惑だとは 思わない? って」 「それだけか」 「うん、別に 声を荒げるほど 怒るようなこともないし、 だからあたしもこの仕事 続いてるんだと思うし」 ふん……と 相槌なのか溜め息なのか 微妙な反応をし、 お兄ちゃんは デスクの上に視線を投げた。 なんとなく、 お兄ちゃんの 言いたいことは判る。 “Raison d'etre”は 拓海さんの力の方が強い、 という話だ。 蛍太は、 アイドル事務所時代には 一番の力を持っていた。 ぐりぐりおめめで 整った顔はもちろんのこと、 育ちがいいから 普段の動きも 洗練されていたし、 おかげでダンスも 上手だったし── なにより声がよかった。 .
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