侵食する執着

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  勝てないからと言って、 蛍太が拓海さんに コンプレックスを 抱いたり、 卑屈になったりすることは ないけれど。 むしろ素直に憧れて 慕っているんだろうし、 “拓海がいるから 俺は身軽なんだ”とでも 口走りそうだ。 普段の仲のよさを 見ていれば判る。 だから拓海さん── “Raison d'etre”のために ならないことはしない。 口には出さないけれど、 蛍太の中には そういう美学だか 哲学に近いものはある。 あたしが できることといえば、 言葉にはせずに 蛍太にそれを 思い出してもらえるように やわらかく自覚を 促すだけだ。 今までの蛍太達の マネージャーさんと 違うところといえば、 そんなところだろう。 .
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