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「……それが判る
莉々だから、
蛍太も従うってことか。
俺もモデル
やめてから長いし、
その観点には
気付かなかった」
モデルと言っても
莉々ほど売れなかったしな、
とお兄ちゃんは
苦笑した。
「まあ、話して
確認したわけじゃないから
判らないよ」
「ああ、判った。
……ところで莉々」
タブレットを
カバンに入れながら、
お兄ちゃんは立ち上がる。
「最近、なにかあった?」
「え?」
「妹さんは
やけに雰囲気がよくなったが
どうしたと
よく訊かれるんだよ。
俺も、そう思う」
「……別に。
仕事、楽しくやってるだけ」
ちらりと脳内に
拓海さんの顔が過る。
あの人はそういうことを
ぺらぺら吹聴する
タイプじゃない。
自分の口で言っとけよ、
と心配しながらも
放任するタイプだ。
無能は俺の周囲には
いらないという
オーラを携えて。
お兄ちゃんは
首を傾けて
こきりと鳴らすと、
幾分優しい目で
あたしを見た。
「莉々に、
仕事が来てる。
……テレビの
アシスタントだが、
やるか」
.
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