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テレビ局の廊下を
無我夢中で突っ切り、
エレベーターで降り、
警備員さんにぺこっと
頭を下げ、
地下駐車場に出た瞬間──
追いかけてきた
蛍太に捕まった。
「待って、待ってよ莉々。
どうしたんだよ」
「……ッ、
もう知らない、
蛍太なんか大っ嫌い」
なにも気にしてないって感じの
蛍太の顔を見た瞬間、
彼も感じるべき羞恥が
負債の肩代わりのように
のしかかってくる。
今は蛍太に
腕を掴まれてるだけで、
あたし達の関係が
他人にも判ってしまいそうな
気がした。
「はなし、てっ」
勢いよく振り払うと、
蛍太はしょぼんと
悲しそうな顔をする。
「莉々、
俺なにかした?」
「自覚がないのが
よけい悪いよ!
なんなの、
……あ、あんなこと
わざわざ言うとか」
「あんなこと?
つけてるよって?」
「あああ」
また言うので、
自分の声で遮った。
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