侵食する執着

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  志緒さんは “Raison d'etre”の いる方を見ると、 「もう少し かかりそうだし」と バッグを持って示した。 「友達に、 コーヒー屋さんの ドリップパック たくさんもらったんで。 莉々さん、 嫌いじゃなかったら」 「え……でも、 それ、拓海さんのもの なんじゃ……」 「ううん。あたしのです。 ……拓海さんが 欲しがるだけで」 志緒さんはちら、と 横目で拓海さんを見た。 恨めしそうな その瞳が定まった瞬間、 奥で拓海さんが ひとつ大きな くしゃみを放つ。 まるで志緒さんが 魔法でも使ったかのような そのタイミングに、 思わずその場で笑った。 .
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