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駐車場は広くて、
些細な音がよく響く。
今はひとけがないけど、
誰かに聞かれたらどうするの。
「だってあれは、拓海が」
「拓海さんは関係ない!
蛍太が……!」
「俺が、なんだよぅ」
納得いかないと、
口唇を尖らせて
蛍太が訴える。
長い付き合いだ、
彼の言いたいことは
そこそこ
汲んであげられはするけど。
「拓海に、
俺達がエッチする
関係ってばれるくらい、
いいじゃん。別に」
「そういうことじゃなくて……」
……なんだろう。
そういう関係なのを、
拓海さんみたいな
ごまかす必要のない
身内の人に知られるのは
別にかまわない。
けどそれは
あくまで記号的な
認識のことであって、
蛍太が口走ったような
生々しい行為のことじゃない。
拓海さんは
記号的な意味で言った。
けど蛍太は、
しっかりあたしとのことを
思い描いて、
言った。
それが判ったから
恥ずかしくて
たまらなくなった。
──まるで、
お気に入りの玩具を
人に広げて見せるみたいに
思えたから。
説明できない
あたしに焦れて、
蛍太がはぁと溜め息をついた。
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