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さっき、口の中に
挿入り込んできた
蛍太の舌の熱さを
つい思い出してしまう。
「……けど、ここ、
テレビ局で」
「そうだけど……」
「いっぱい人がいて、
お仕事、してて」
「俺の仕事は
マスコット的な
お色気担当だよ」
「……一部だけどね」
「放送コードに
引っかからない程度の
正しいお色気を
振りまくには、
俺自身が潤ってないと
だめだと思わない?」
“Raison d'etre”の
蛍太じゃなければ、
とんだ自惚れ屋の台詞だ。
今度は蛍太が
一歩あたしに近付く。
胸と胸が
当たってしまいそうな距離。
彼の手が、
わき腹をかすめて
抱き寄せる直前で止まる。
腰にも胸にも行ける
その位置は
ちょうど心臓のあたりで、
身体に緊張が走った。
蛍太の親指は、
胸の下をくすぐる。
「……っ」
「莉々、俺達の車どこだっけ」
俺達の、という言葉に
思考が痺れる。
まるで自分の部屋みたいに
言うから。
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