寝ても覚めても

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  番組があたしに 依頼したのは、 特別にゴールデンの枠で 放送されるコーナーの ひとつで、 海水浴場でのロケだった。 ──そりゃあ、 水着だよ。 「どうしますか! 莉々さんスタイルいいので バンドゥビキニでなくても お綺麗ですけど! あ、でもモデルさんは 今年のハヤリ 押さえておいた方が いいですか! バンドゥビキニにしますか!」 やたらテンションの高い ADさんは、 この間大学を 卒業したばかりという 女の子だ。 子どもの頃 あたしのCMを見て 憧れていたんだってことを、 企画書の説明もそこそこに 熱く語ってくれた。 スタッフさんの中に 自分のファンが いるというのは、 仕事としては やりやすい条件だと言える。 一緒に出る 芸人さんのように 無茶ぶりをされても困るし。 そうは言っても、 目の前で なにか面白そうなことが 巻き起こったら、 止めもせずに煽るのが テレビマンだ。 以前いた事務所は そういうものから 徹底的にあたしを 守ってくれていた。 莉々は知的路線だから、 テレビに出て 媚びる必要なんてない、と。 .
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