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冬の帰り道に
恋を置き去りにされても、
まだそばにいたいなんて
望んでしまうほど。
声を上げて
泣いてしまいたいけど、
蛍太が隣で寝ている。
こんなに
近くにいるのに、
蛍太が遠い。
寂しい。
「……ッ」
こらえきれずに、
継いだ息に声が混じって
ひっくり返る。
その瞬間、
すやすや眠っていた
蛍太がびくりと反応した。
「……あー?
ん、莉々……?」
焦点の定まらない瞳を
あたしに向けると、
蛍太はしぱしぱと
まばたきをする。
慌ててもう一度
涙を拭うと、
蛍太は驚いた様子もなく
顔を寄せてきた。
「……どしたの、莉々。
泣かないで」
「泣いてない」
「うそー……。
泣いてたよ……」
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