【Side:蛍太】君の飼い犬になりたい

2/35
前へ
/35ページ
次へ
  杉本さんの安全運転に 微睡んでいると、 莉々の方から ジャンジャン音楽が 鳴り出した。 はっと目を開けると、 莉々が俺の荷物の中から おずおずと スマフォを取り出し、 差し出してくる姿に 遭遇する。 可愛い。 可愛いけど もうすぐ仕事だから いいよと言うと、 無言でずずいと 押し付けられた。 九鬼さんなり 事務所の人間なり、 仕事の連絡なら 俺が莉々と一緒にいることは 判ってるんだから、 彼女の方に かけてくるはずなのに。 面倒で眉根を寄せながら スマフォの ディスプレイを見て、 力が抜けた。 “お父さん”── 今頃海外に一時 避難しているはずの、 日下部蛍市(けいいち)。 仕方なく出ると、 少し遅れて「おお」と お父さんの声がした。 .
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加