飼い犬(チワワ)が手を噛んでくる

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  「莉々、言い方がエッチ」 「そんなこと……」 「俺の言葉で、とか。 いやらしい」 まだうっすらと赤い頬で、 蛍太はあたしを揶揄する。 そんなことない、と もう一度強く 言えないのは、 あたし自身の胸の内が やましいからかも 知れなかった。 だって、 他の誰も知らない 蛍太を覗き込みたい、 知りたい。 他の誰も知らない 蛍太が、欲しい。 蛍太のぐりぐりおめめが、 悪戯っぽく細められる。 「……莉々には、 鮮やかな赤が一番似合うから。 俺のコンプレックス、 それで塗り替えたかった」 「けーた……」 「見た目くらい、 莉々の隣にいること、 許されたかったんだぁ」 ……思っていた以上の ことを言われて、 今度はあたしの頬が 熱くなってしまった。 蛍太はあたしの顔を 覗き込んできて、 「お風呂、一緒に入る?」 と首を傾げる。 核心を突いた そのあやしげな瞳に、 今度はこくんと頷いてしまった。 .
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