飼い犬(チワワ)が手を噛んでくる

34/35
前へ
/35ページ
次へ
  素直な蛍太は、 赤い顔のままじりじりと 指先だけであたしの手に 触れてくる。 しばらくそのまま じっとしていると、 彼は諦めの溜め息を漏らした。 「……莉々ってさ、 案外強いよね」 「強い? そうかな」 どういう意味のことだろうと ぼんやり考えていると、 蛍太はふっと笑う。 「俺が絶対勝てないの、 知ってる感じがする」 「そんなことないよ」 蛍太に初めて抱かれたあと、 彼の気持ちを知るのが怖くて 悶々としていたことを 思い出す。 ああいう オトメゴコロみたいなものを、 蛍太こそ判ってないって 何度思ったことか。 「ねえ」 腰を上げて、 もう少しだけ蛍太のそばに すとんと座り直す。 膝と膝が当たった。 .
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加