オリオン・ブルーの君

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  さっきから何人の人を 飲み込んだか、 判らない。 なんてことはない。 緊張を和らげるために 手のひらに“人”の 字を書いてぱっくんと 飲み込むあれだ。 たぶん、 ゆうに30人くらいは 飲み込んだはずだけど、 心臓がばくばく うるさいのが止まらない。 こういうのはきっと 人数じゃないんだと思う。 プラシーボ効果 じゃないけれど、 結局は自分の心持ち ひとつなんだろう。 これ以上人を飲むのは 諦めて、 ゆっくり深呼吸をした。 ソール化粧品の オーディション控え室、 足下に敷かれた 紺色のPタイルを じっと見下ろしながら、 これはいつ 張り替えたものだろう、 とか全然関係ないことを 考える。 目が乾いてきた気がして、 まばたきをしてから そっと控え室を見渡すと、 今をときめく あらゆるジャンルの モデルさんが静かに 順番を待っていた。 昔、 こういうオーディションが あった時、 顔見知りに出会うと 普通に話ができたものだけど、 この年齢になると 色々シビアなのか あの人もこの人も 顔見知りなのに、 とても話しかけられる 空気じゃない。 .
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