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「だってお前、
下手にそんな経緯
話したら
期待するだろう」
珍しく“だって”なんて
言い訳めいたワードを
織り交ぜながら、
事務所の大きなワゴンを
ソール化粧品さんに
回してきたお兄ちゃんは
肩を竦める。
うしろでゆっくり
休ませて欲しいと
訴えた朱里さんは、
助手席をあたしに譲った。
朱里さんはお兄ちゃんに
戻ってきて
欲しがっているということを
人づてに聞いて
知っていたから、
きっと隣に座って
お話したかったんだろうと
思うのに。
お兄ちゃんに対する、
“よく判らないけど
はめられた気がする”
というもやもやと
相まって、
複雑な思いが胸をかすめる。
「期待するかどうかは
判らないけど、
マネジメント部にその話
落としてくれたって……
どこと関わってるか
判ってると、
また違うと思うんだけど」
「営業の主力人員の
耳には入れてる。
俺だけで片付く仕事を
下に回す気はないよ」
「……」
「それに、
お前はタレント部の
人間でもあるから」
「別に他のタレントさんや
俳優さんに言ったりしないよ」
「判ってるが、
情報管理は自分でやりたいんだ」
「ぬう」
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