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“Raison d'etre”の前で
貫く敬語が、
ここでは消えている。
朱里さんとお兄ちゃんが
いかに親密な
アーティストと
マネージャー
だったかってことが窺えた。
そりゃ、そうか。
朱里さんが
10代の頃から
去年の夏まで、
ずっとだもんなぁ。
「歌姫さまとか。
九鬼さんに言われてもね」
「“Raison d'etre”が
来たとはいえ、
我が社の大黒柱は
未だにお前だし」
「責任オモーイ」
「ギャルみたいな口調で
言っても無駄だ。
もうそんな
若くないだろ、お前」
遠慮のないお兄ちゃんの
口調にびっくりする。
確かに朱里さんは
そろそろアラサーだけど、
アイドルじゃあるまいし。
すると気品あふれる
歌姫はバックミラー越しに
お兄ちゃんを睨み付け、
運転席をごんと蹴った。
「!?」
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